03/09/21更新)


4.久方ぶりの鳴子探訪記


2003年3月1日午前4時。

「ジリリリリ・・、ジリリリ・・・、」
枕元の目覚まし時計がけたたましく鳴り出した。一瞬,、今日は土曜日なのに「なんでだあ・・・」と思うが、朦朧とした頭の中で今日は久しぶりに鳴子に行く日なのを思い出す。しーんと静まりかえった我が家で、こそこそと着替えを済ませ、前夜にこっそり準備した温泉セットをチェックする。良し準備OKだ。

4時半に自宅をそろり出る。まだ辺りは薄暗く、しかもかなり肌寒い。人通りのない歩道を急ぎ足で最寄駅へ向かう。今日は始発電車にどうしても乗らなければならないのだ。私が駅の階段を登りだすと同時に閉じていたシャッターがガタガタと開く。白い息を吐き出しながら改札を通り抜けホームで電車を待つ。あと5分だ。駅へは私が一番乗りであったが、少しずつ人々が集まってくる。

じりじりと時間が過ぎたような感じがしたが定刻通りに電車はホームへ滑り込んできた。意外に乗客は多い。登山に向かうと思われる中高年の夫婦連れ、スキーへ向かう親子連れ、一心不乱に携帯電話にかかりきりの若者、まだ覚醒しない頭の中で温泉に浸かる夢を見る者・・・。JRに乗り換えやっと東京駅へ到着だ。今日はJR東日本の列車が格安で乗車できる日なのだ。それ故朝から大勢の客が新幹線乗り場にあふれている。指定席は随分前から満席、自由席もかなりの混雑ぶりだ。

久しぶりに新幹線の立ち席に乗ってしまった。明らかに鉄道オタクと思われる人々がたくさん乗車しており、車内は何か異様な雰囲気だ。宇都宮、郡山を過ぎても乗客は少なくなるどころか増加していくのだから呆れてしまう。通常ならもう座れているはずなのだ。とうとう古川の駅まで立ちんぼは続いてしまった。彼らはいったいどこまで行く気だ?ゆっくり寝ていくつもりだったが、鳴子に着く前に相当に疲れてしまった。

古川駅で今回鳴子を一緒に廻る予定のYさんにピックアップしていただく。Yさんの車に乗ってちょっとして驚く。なんと私の鼻がアブラ臭を感知したのだ。それほど強いものではないが、確実に微アブラ臭がエアコンの通風孔から香ってくるのだ。Yさんにその旨話をするものの、にやにやするばかりで埒が明かない。とっても気になったが、あまり質問攻めにはせず一路車は鳴子温泉をめざす。何か秘密があるに違いない。Yさんアブラ臭の謎そのうち解明してやるぞ!

さて、真新しい道の駅で屋代@鳴子さんと合流し、いよいよ鳴子の温泉めぐりの開始だ。やはりいつものこのことながらワクワクする。最初の一湯は「高友旅館」だ。一応ここが今回のミニオフミの集合場所なのだ。Mさんとその友人のTさんとここで合流。「高友旅館」は久しぶりで約2年間ご無沙汰していた。当然のように「黒湯」に向かう。掛け湯を十分にし、「黒湯」に浸かる。うーんん、いいい!!。新幹線での疲れが吹っ飛ぶ心地よさだ。もちろん、アブラ臭と硫黄臭が入り混じった複雑な臭いも健在だ。お湯も少しだけ熱めで体の芯まで染み入るようだ。Yさんと何度も出たり入ったりしながらこの素晴らしいお湯を味わう。今回鳴子温泉がはじめてだというTさんが「黒湯」を一発で気に入ってくれたのにはちょっと驚く。

次は長年私と相性が悪くなかなか入浴する機会のなかった「きぼこ荘」だ。源泉は二見源泉で宿の裏手が源泉湧出場所だ。当然アブラ臭が周囲に漂っている。男湯はお湯を入れている最中で七分ぐらい溜まった状態でかなりお湯は熱い。ふうふういいながらお湯に浸かるが、相当に熱い。期待したアブラ臭はちょっと弱めでやや拍子抜け。女湯はお湯が満たされており、こちらに挑戦する。お湯は適温でアブラ臭やや強しで、今回は女湯の方が状態は良かったようだ。ただ今まで入浴した二見源泉の中では「謎の公務員宿舎の湯」が一番良かったように思う。

「きぼこ荘」女湯にて

お昼をいつもの蕎麦屋さんで済ませたが、屋代さんがいつの間にか蕎麦アレルギーになっていたのには驚かされた。次は屋代さんが特別に許可をとってくれた「地元民専用の共同浴場(その1)」だ。ここは無色透明のあっさりしたお湯ながら、湯量豊富で掛け流しになっており新鮮なお湯にとっぷり浸ることができる。皮膚がお湯の中で呼吸しているような感覚だ。毎日浸かるにはぴったりだ。


「すがわら」も久しぶりの訪問だ。一見鳴子のお湯の中では大人しげに思われる湯で特徴がないように語られるが、私はこのお湯が大好きだ。何とも言えない肌触りでやさしく体を包んでくれる。貸切風呂も随分増えて一般受けする工夫もそこかしこに見られ、お客さんが増えててきているという話を聞き嬉しくなってしまった。今度は宿泊でもしようかな。

今回のツアーで屋代さんが許可を取ってくれたもう一つの「地元民専用共同浴場(その2)」を訪れる。私は何度目かの入浴だが鳴子温泉の中でも貴重な「ぬる湯」アワアワ系のお湯だ。高温泉の多い鳴子の温泉達を廻る途中にこういうお湯に浸かると正直ほっとするものだ。ここは鳴子温泉のオアシスかもしれない。ここで心残りながらYさん、Mさん、Tさんとお別れする。ここからは単独での温泉巡りだ。

「地元民専用の共同浴場(その2)」にて


これまた久しぶりに「東蛇の湯」を訪れてみた。相変わらず賑わっているようだ。ここの人気は本格的だと思う。中山平温泉のぬるぬるはホントに久々だが、なにか物足りない。何故だろう?羽根沢温泉を知ってしまったためだろうか?以前はもっとにゅるにゅるしたような気がする。やはりかなり加水されているのか?「東蛇の湯」があまりぬるぬるではないとすると「丸進別館」亡き後は調子の良いときの「琢秀」というのではちょっと悲しいなあ。

鳴子の温泉街の裏手にある「ホテル最上」を今回初めて訪れてみた。この一帯の温泉旅館はほとんどが町営源泉を引いているはずだ。期待しないで入ったがここはかなりお湯の使い方が良い。加水せず湯量で湯温を調整しているようだ。適度の硫黄臭とぬめり感を味わうことができた。町営源泉を利用した旅館では最上の部類に入ると思う。

川渡温泉も久しぶりだ。「沼倉旅館」にするか「川渡共同浴場」にするかちょっと迷ったが「川渡共同浴場」にする。お湯はかなり熱めで硫黄臭もかなり感知でき、かなりお湯の調子は良いようだ。何とも言えぬほど心地が良い硫黄臭が堪らない。熱いお湯に何度もとっぷり浸かっていると段々へろへろになってくる。やはりここもいいなあ。

再び鳴子温泉側に戻り最後の時間をゆっくりお湯を楽しむことにする。「西多賀旅館」は実は何度か宿泊の予約を入れたことがあるのだが、その度ごとに断られている。1人だと宿泊させないのだろうか?なのでちょっとだけ印象が悪い。アブラ臭ファンの中には「西多賀旅館」はかなりのアブラ臭がするという人もいるが、私にはここはアブラ臭というよりやはり硫黄臭が前面に出ているように感じられる。かなり個性の強い硫黄泉で臭い・肌触り・入浴感等どれもとっても一級品だ。だが今回はちょっとお湯の出が細く臭いも弱めで湯温もぬるめであったのが惜しい。湧出量が減ったという噂もあるが季節的な要因であると思いたい。

今回も最後の締めは「東多賀の湯」だ。なんだかんだと言っても私はここが一番落ち着くのだ。この湯小屋の雰囲気がとても好きだ。木造の狭い浴槽にたっぷりの新鮮味溢れる源泉が注がれかけ流されていく。湯面からは刺激性のある硫黄臭がつんと鼻を突く。お湯にゆったりと身を任せながら深く深呼吸をする。うーん、堪りませんね。この手の白濁の硫黄泉は他にもたくさんあり、特別個性的というわけではないのだが何故か妙に心地が良いのだ。あー、また新幹線に乗って神奈川まで帰るのかと思うと心が重い。まあ明日は日曜日でゆっくりできるのでよしとするか。心残りではあったが渋々東多賀の湯を後にする。勿論たっぷりと下着に硫黄臭を染み込ませたのは言うまでもない。

最後の川渡・西多賀・東多賀で硫黄臭まみれになり私の身体からはかなりの硫黄臭が発散していたはずだ。帰りの電車の中で鉄道オタクたちに私の自慢の硫黄臭をたっぷり嗅がせるという作戦であったが、帰りの新幹線は朝とは打って変わってガラガラでちょっと拍子抜けだ。がらんとした車両の中で一人だけ硫黄臭をぷんぷんさせているのも何かもったいない話だ。しょうがないので自分で自分の硫黄臭を嗅ぎまくり鳴子温泉の余韻に浸る。(私は頭がおかしいのか?)

楽しかった鳴子温泉巡りも夜の11時に自宅に帰り着き幕となった。疲れたが心地の良い疲れ方だ。車で日帰りだと帰りの運転が大変だが、鉄道だとビールを飲んで寝てこれるので、とても楽ちんだ。たまには鉄道&温泉もいいや。


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